SIB(ソーシャルインパクトボンド)とは、民間事業者が、資金提供者から調達した資金をもとに事業を行い、あらかじめ設定した成果目標を達成できれば、行政が資金提供者へ交付金を支払う成果志向の取り組みです。滋賀県東近江市では、2016年度に国内初となる「まちづくり分野」でSIBを導入しました。実施8年目を迎える2023年、過去7年間の取り組みを振り返ることからSIBのモデルケースとして広げ、まちづくり分野のSIBにおける必要な共通認識を創ることを目的に、事業報告書を制作しました。
本書がSIBについてご検討いただくきっかけになれば幸いです。
「合同会社 社会的投資支援機構」作成
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SIBの動向
SIBは、2010年に英国でのSIBの導入をきっかけに英国・米国を中心に普及しました。米国のシンクタンクBrookingsによれば、2021年1月までに世界で組成されたSIBは、総計で206件(35カ国)、調達資金額は431百万ドル以上に発展しています。
日本においても、特に少子高齢化による社会的資源の逼迫から限られた予算を活用して最大限の成果を出すことが求められており、2016年に開始しました。SIB開始後、市場規模は拡大傾向にあり、2021年10月時点の内閣府の調査では、全国で68団体によって76件以上のSIB・PFS※の案件が実施されています。ただし、そのうち約7割の50件が医療・健康、介護分野です(出典:内閣府『成果連動型民間委託契約方式(PFS)による事業について(2021年10月末時点調査)』)。
合同会社社会的投資支援機構※では「小・中規模の地域でまちづくり分野」を中心にSIBを活用しています。国内事例では、まちづくり分野のSIBが14%、その他の分野でのSIBが20%であり、少数の事例に該当しています。テーマは多様で、福祉や就労支援、子どもの居場所づくり、空き家活用、環境保全、教育、農業、食、地域の特産品開発や商業地域等活性化、SDGsの達成に関する事業など、地域性・社会性の高いプロジェクトを取り扱っています。
※PFS(成果連動型民間委託契約方式)・・・行政が民間事業者に社会課題解決型の事業を委託し、その成果に応じて行政から報酬を支払う手法。SIBもPFSの一種である。
※合同会社社会的投資支援機構・・・東近江市をはじめとする各地域のSIBにおいて営業者としての役割を担う。2017年に代表社員の株式会社未来資本製作所がファンド営業者を担い、2018年に子会社として設立し、SIBの専業に至っている。
まちづくり分野の先駆的SIB事例「東近江市版SIB」
2016年度、国内初となる「まちづくり分野」で、コミュニティビジネススタートアップ支援事業においてSIBを導入したのが東近江市です。2018年度よりSIBに投資型クラウドファンディングを取り入れ、合同会社社会的投資支援機構が営業者となることで、創業して間もなく実績がほとんどない事業者、NPO・任意団体といった商人性や事業性を判断されづらい事業者の資金調達を可能にしています。なにより特徴的なのは、事業者が出資者という「応援団」を得ることができること、出資者は地域課題に気づき取り組みに共感することで当事者となっていくことです。
地域的課題を解決しようとする取り組みを「温かいお金の流れを通じて支える」手法は、その新規性をもって「東近江市版SIB」と呼ばれています。
本書制作にあたって
東近江市SIB事業報告書は、東近江市版SIBを実施していく上で不可欠な、下記の方々との振り返りを経て、完成いたしました。本書では、SIB終了後の運営者の様子や、東近江市版SIBの意義、実施のポイントなどを知ることができます。
【事務局】中間支援組織:公益財団法人東近江三方よし基金 山口美知子 様
【東近江市】市民部まちづくり協働課 岡崎優子 様 松居奈美 様
【運営者を代表して】subaco.プロジェクト 藤田彩夏 様
SIB継続支援 ワンストップサポートの展開
東近江市SIBをはじめ、合同会社社会的投資支援機構が関わる「まちづくり分野」のSIBは単年度の事業であり、SIB終了後の事業者が持続的に事業を進めるための継続的な支援を求める声をいただきます。
そこで、合同会社社会的投資支援機構において、地域事業者のSIB実施前における申請書や事業計画のサポート、SIB終了後の事業物の可視化をしていきます。SIBをはじめとする周辺の申請書や事業計画、広報業務、調査・分析・発信等により、SIB期間のみならずSIB前後の事業者支援、自治体や中間支援のSIB関連事業を行ってまいります。
詳細は、本書をご覧ください。
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