2017年12月21日
1-2 社会的インパクトと四方良しの投資
社会的インパクトってどんなこと?
野池:ところで、社会的インパクトって、具体的にどう捉えれば良いと思いますか?
深尾:場面によってインパクトの中身は変わると思いますが、たとえば事業において「地域の独居のお年寄りにお弁当を70膳配りたい」といった目標設定がされることがありますが、これはアウトプットについての目標です。
これに対して「お年寄りの孤独死を対象地域内で3%から1%以下にする」といった設定をすると社会的インパクトが見えてきます。それほど変わりがないように見えますが、社会的インパクトを考えるとき、1つのアウトプットだけでなく、いくつかのアウトプット、そのための複数の取り組みが見えてきます。
また、社会的インパクトを評価するうえでの観点が変わるので、実際にどれだけ孤独死が減ったかどうか測定することができるようになります。そのため「70膳配ったら終わり。私たちいいことしたな」といった自己満足に陥ることがなくなると考えられます。
地域の事業が投資と結びつくとき、投資家がインパクトを客観的に評価、選択する際には重要な観点と言えます。
野池:自分の大切なお金を投資するにあたっては、やはり意味のある結果を求めたいものですよね。
インパクト投資家と四方良しの投資
野池:ここで投資家の目線をもう少し想像したいんですが、客観的にみて普通の投資とどう違うんでしょうか?
深尾:「普通の」のところが難しいですが(笑)、比較的じっくり見極めて出資をおこなうものを「投資」、短期的な売り買いで出資を行うものを「投機」と捉えることもできます。資本に投じるか、機会に投じるかの違いとも説明されます。
それぞれに経済活動において役割があるのですが、社会的投資は、投機の対象にはなりにくいと思います。期間が2〜3年の事業でも、投資家の方々には、じっくり付き合っていただく必要があると思います。
多くの場合、利回りはあまり大きくないですが、社会的インパクトと同時に経済的なリターンも期待でき、事業の内容、ビジョン、安定性などを見極めて、両立を目指すことが社会的投資の「面白さ」になるのではないでしょうか。
このようなタイプの投資家を「インパクト投資家」と呼ぶことがありますが、社会的投資にある種の「ワクワク感」を持っている人ではないでしょうか。
野池:今もどこかでワクワクできる投資先を探しているインパクト投資家がいるかもしれないということですね(笑)。
深尾:そうです。それもかなりたくさんいらっしゃるかもしれない。私たちとしては、インパクト投資家のニーズに応えるアクションもしていきたいと考えています。そんな中で、「売り手よし、買い手よし、世間よし、未来よし」の三方良しならぬ、「四方よし」の投資の機会を作ってみた。というところです。(笑)
野池:「作ってみた」って、なんだか気軽な感じですけど・・・(笑)
深尾:実際に仕組みをつくるのは、正直なかなかタフなチャレンジですが、楽しんでやっていきたいですね(笑)。
野池:はい。投資家の方たち、事業者の方たちと楽しみながらも、真摯に進んでいけたらいいなと思います。
つづく