昨今、マスメディアや新聞記事、企業HPなどにおいて「SDGs」「ESG金融」というワードをよく目にするようになってきました。
今回、よく耳にするようになったこの言葉について、普及している背景やその意義などについて考えてみたいと思います。
1. SDGs/ESG金融とはどのようなものか
(1)SDGs
Sustainable Development Goalsの略称で、「持続可能な開発目標」と訳されます。2015年に開催された国連サミットで採択された「誰一人取り残さない持続可能で包摂性のある社会」を実現するため、2030年を年限とする17の国際目標です。
国内では、「SDGsアクションプラン2021」で取り組む重点項目として、SDGsを原動力とした地方創生、経済と環境の好循環の創出が方針として明記されています。
SDGs未来都市、地方創生SDGs官民連携プラットフォーム、地方創生SDGs金融等を通じ、SDGsを原動力とした地方創生を目指しています。
金融業界におけるアンケート調査でもSDGs/ESGに関する取り組みを行っている企業が90%以上を占め、急速に関心が高まっていることが示されています。
関心が高い目標としては「目標8 成長・雇用」「目標11 都市」などが挙げられます。
各企業がSDGsへの取り組み意思を明確にする一方で、持続可能性を高めるために、実施する活動と事業性(収益性など)との統合が重要になってきています。
(2)ESG金融
Environment(環境)、Social (社会)、Governance(統治)の頭文字をとったもので、3要素の側面を加味した財務、非財務の両面から企業を評価する金融手法です。
企業活動を行うことで与える環境や社会への影響、効率的な収益の源泉となりえる統治を適切に評価し、単なる過去の実績評価だけにとらわれない金融を可能にする概念です。
ESG要素に着目した事業性評価を行うことで、地域企業の価値を発掘・支援し、地域循環共生圏の創造を目指すものです。
(3)取り組みの必要性
SDGs/ESG金融に取り組むことで以下の効果が期待できます。
① 企業イメージやブランド力の向上
② 社会課題・地域課題解決へ寄与
③ 新たな事業機会の創出
④ 事業継続リスクヘッジ
企業に対するアンケート調査では、「企業イメージの向上」、「経営方針の明確化」を中心に、ポジティブな認識をしている企業が多くみられ、メリットを感じている企業は、事業規模を問わず年々増加傾向にあります。
社会課題解決に取り組むことにより新たな事業が創出され、その事業に対する投融資が促進されることで、経済や社会環境が好転するエコシステムを構築することが期待されています。
企業にとっては、新たな事業領域に取り組むことで、企業価値が上昇します。
また、差別化要因となることや、金融機関との共通価値を創造していくことが企業の持続可能性を高めることにつながります。
2. 国内金融機関の取組状況
(1)金融機関の取組事例
地域経済は大きな環境変化に直面しています。行政は金融機関に対し、ビジネスにつながる可能性をもった地域のESG課題を積極的に支援するファイナンスに取り組み、その新たな事業構築に関与・協力していくことを求めています。
環境省では「持続可能な社会の形成に向けたESG 地域金融の普及展開に向けた共通ビジョン」を策定し、令和元年度から「ESG地域金融促進事業」を実施しています。環境・社会にインパクトがあり、地域の持続可能性の向上や地域循環共生圏の創出に資する地域金融機関の取り組みを支援しています。
主な取り組みの事例
寄付型私募債/ローン
社債発行手数料や金利の一部(0.2%程度)を様々な外部機関へ寄付する仕組み。寄付先については、発行体や借入企業が選定する。教育機関寄付型、SDGs型などがある。
グリーンボンド
再生可能エネルギーや省エネルギー事業などに取り組む企業に対し、資金使途を限定して債権等を発行するもの。
SLL
サステナビリティ・リンク・ローン。借手企業が設定するSPTs(サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット)を、外部格付機関等が第三者評価し、その達成度合いによって借入利率等が変動する仕組み。
SDGs宣言支援サービス
取引先企業が現在取り組む活動を評価するとともに、将来の実行課題を見える化し、SDGs宣言の作成を支援するサービス。
ESG投資信託
ESG課題解決に取り組む企業体株式を投資対象とした投資信託で、金融機関が受け取る手数料の一部を社会課題解決に取り組む団体等に寄付するもの。
3. 社会的インパクト投資とのつながり
「社会的インパクト投資」の起源として、2006 年に発足した国連のPRI(責任投資原則)に遡ることができます。PRI は、長期的な経済的リターン向上のため、機関投資家は環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの要素(ESG)を考慮し、投資の意思決定を行うべきであることを宣言するものでした。これにより、その考え方を取り込むESG金融が投資家や金融機関へ浸透していきました。
当初、社会的インパクト投資は慈善活動を目的とする財団や基金が、寄付よりも持続可能な支援方法として、資本市場を通じて社会的企業に資金を提供するためになされてきたものです。
しかし、2015 年にはSDGsが採択され、環境問題や貧困、ジェンダー課題などを解決するために、民間部門における資本市場や経済活動へも概念が広がりました。このような変遷から見て、ESG金融、SDGs、社会的インパクト投資の3つに内在する概念や目的には、共通する部分が多いといえます。資金供給の側面から見れば、ESG金融の担い手である地方金融機関等、社会的インパクト投資の資金供給団体、公的機関がSDGsに取り組む事業者へ資金提供することで、持続可能な社会の実現を促進してくことにつながっていくことが期待できます。
従来は、投融資は一義的に回収可能性やパフォーマンスを高めることを目的としてきました。それが変容し、ESGを考慮した融資実行や社会的インパクトの大きい事業へ資金が集中していくという潮流があります。こうした流れにより、SDGsに積極的に取り組む企業活動が活発になり、社会全体の持続可能性を高める金融エコシステムの形成をすることが可能になります。
≪参考文献・WEBサイト≫
ESG地域金融実践ガイド 2.0 (案)
持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて日本が果たす役割
SDGs/ESG金融に関する金融機関の取り組み
企業がSDGsに取り組む意義
「社会的インパクト投資」とは何か
※以下ファンドはお陰さまで満額達成し、現在出資金も活用しながら事業を進められています。
【たんたんエナジー 自然の恵みの電気で子どもを育むファンド3号@福知山】
【たんたんエナジー 自然の恵みの電気で子どもを育むファンド2号@福知山】
【有田川町木質バイオマス発電事業B号匿名組合】(愛称:【有田川町】地域資源循環型「木質バイオマス発電ファンド」)
【たんたんエナジー 自然の恵みの電気で子どもを育むファンド@福知山】
【下北山村 小又川水力発電所更新プロジェクト】