2023年12月22日
2.岡山市SIBをふりかえって〜PS瀬戸内株式会社 石原達也さん〜
岡山県岡山市に生まれ、これまで県内で社会事業の起業・経営支援、限界集落の支援、まちづくり会社、災害支援等に携わってきた石原達也さん。岡山市SIB事業では、中間支援組織であるPS瀬戸内株式会社としてサービス提供者を束ね、まさに「官民連携の要」となりました。セミナーでのご講演内容をもとに、事業報告書には書かれていない石原さんの想いをまとめました。
はじめに
本事業は、2014〜2016年度の「健康ポイント事業」(第1世代)、2017〜2018年度の「健康ポイント事業」(第2世代)が背景にあります。当時、岡山市役所に厚生労働省から出向されていた方のお力添えもあり、既存事業をSIBでテコ入れする形でスタートしました。
SIBという仕組みを導入したことについて
岡山市・サービス提供事業者双方にとってめざすべきことが明確となり、税金を財源とする事業費を有効に活用する意味でも有意義であると感じました。
また、複数企業による連携で実施をしたため、企業間での目標を一致させる意味でも効果的でした。具体的には、各サービス提供事業者に本気で取り組んでいただくため、サービス提供事業者にも出資いただきました。成果連動の運命共同体になることで、チーム作りをめざした形です。
成果目標の設定について
上述の通り、目標を設定する意義は大きいですが、その目標をどの程度の理想値で設定するかで、岡山市・サービス提供事業者双方で大きな違いが出ると感じました。
例えば1年目は、プログラムの登録者を1年間で15,000人集めるという目標を設定しました。この目標は高いハードルであったため、初期段階で目標が適切なのか議論を重ねました。最終的には、市の意向を汲む形でこの目標を採用しました。また、国の交付金事業としての目標とSIBの成果目標がすべて一致しているわけではありません。そのため、岡山市・サービス提供事業者間で力点や事業計画設計が変わるなどの難点があり、それを一致させることが前提として必要となります。
→成果目標の詳細はこちら(岡山市SIB事業報告書)
投資型クラウドファンディングによる個人・法人からの資金調達について
本事業は、各年度の目標と最終目標があり、事業期間も長いなど、事業に対する深い理解が無いと捉えにくい側面があります。関係者・弊社・参入各社のステークホルダーからの出資が多く、いわゆるクラウドファンディングという手法の特性や利点を発揮しにくかったと考えています。一方で、手続きはオンラインであったため、わかりやすく利便性が高かったです。
サービス提供との市民の参画について
色々な事業者に参加していただくため、ポイントの獲得方法にバリュエーションを持たせました。例えば、フィットネスジム利用、カルチャークラブや公民館など行事への参加、体脂肪測定や健康診断の受診でポイントがつく仕組みをめざしました。
様々なポイント獲得の方法があることは一長一短であり、「ポイントシステムが複雑すぎてよくわからない」という市民の声をいただくこともありました。しかし、複数事業者に協力いただいている中で、まずは各事業者それぞれが「頑張っていきたい」という気持ちになるようなポイント獲得方法を設計することをめざし、取り組んだのです。
市民の参加とポイント獲得方法の工夫
プログラムの登録者を1年間で15,000人集めるために、新聞、雑誌、テレビ、SNSなど思いつく限りの広報手段を一通り行いました。加えて、岡山のいわゆるシェア型のサイクルや道路の大型ビジョンなど、なるべくあらゆる形で目につくように広告をひたすら展開しました。また、店舗の街頭で登録のキャンペーンやイベント開催など、様々な取り組みをくり広げていきました。
本事業の振り返りと今後について
オンラインコンテンツによるアンケート結果では、食生活や運動習慣の改善傾向が見られ、目標達成率や健康の改善に関する評価結果も示されました。さらに本事業により、複数の事業者間での連携や公共事業の重要性も強調されたと考えています。全体としては、本事業は医療費削減や新たなビジネスチャンスの創出など、岡山市に多くのメリットをもたらしたといえます。
一方で、複数の事業者での連携や調整コストの増加、目標設定の難しさなどが課題として挙げられます。また、行政―民間事業者間での目標のすり合わせや相互理解不足も課題として残りました。
本事業は、活用や市民参加の促進など、独自のアプローチが評価されています。また、民間事業者が提供する有料のサービスと、行政機関が無料で提供する公共的なサービスは、実は似た内容を持っている場合があります。そのため、公共事業と民間事業の連携・協力が、重要かつ効率的な事業展開につながるでしょう。
■関連リンク
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