2021年8月20日
2.全国的にも例の少ない試み 保育施設が地域交流の“繋ぎ役”
―――長年、保育施設を運営している津留さんにとっても、「熊本県フットボールセンター(仮称)」のような“地域で活用されるスポーツ施設に保育施設が併設されている”という環境は珍しいものですか?
津留
私の知る限り、こうした事例を見たことがありません。全国でも例の少ない試みではないかなと思います。
人口が密集する都市部では、十分な面積を確保できる土地が少なく、保育施設の専有面積は非常に限られています。
そうなると当然、子どもたちは室内で遊ぶ機会が圧倒的に増えてしまいます。
「熊本県フットボールセンター(仮称)」では、都市部に隣接していながら、そうした部分を払拭できるのが大きいですね。
―――全国的にも珍しい保育環境の中で、子どもたちにはどのように成長してほしいとお考えですか?
松下
併設の保育施設の目的は、園児たちにサッカーをしてほしいというものではありません。
整備されたグラウンドだけでなく、周囲は田畑に囲まれ、すぐ近くには加瀬川や江津湖が流れる自然豊かな環境を生かしながら思い切り体を動かすことで、将来自分のなりたいものになれる土台づくりになればと考えています。
もちろん、その中からサッカー選手になる子が出てきてくれれば嬉しいことですが、まずは社会で活躍できる人になるためにベースを固めていってほしいと思います。
津留
私も同感です。スポーツを通して子どもたちの中に、優しさや挑戦する強い心が根付いていってほしいですね。
さらに、自然やスポーツと触れ合うことでたくましい体もつくり上げていってもらいたいと願っています。
また、複合施設である「熊本県フットボールセンター(仮称)」」には、地域の方々を始め多世代が利用する場所になります。
保育施設の子どもたちには、そうした方々が交流する際の“繋ぎ役”の役割も果たしてくれると期待していますし、園としてもそうした機能を発揮していかなければと考えています。
―――多世代や異世代間の交流が増えることは、サッカー協会が目指す、「スポーツを通じたまちづくり」にも繋がりますね。
松下
施設内に設けるシェアオフィスにさまざまな企業・団体の方が入ったり、コワーキングスペースで園児やサッカーの練習に来ている子どもたちの父母が仕事をしたり、多目的スタジオで中高年の方々が趣味のサークルに興じたりと、センターはいろいろな方々の利用を想定しています。
ただ、それだけでは単に幅広い世代が利用しているだけで、「交流」は生まれません。
私は、そのハブ(繋ぎ)役になるのが保育施設と、その子どもたちではないかと期待しています。
例えば、施設を訪れる高齢者と園児たちとの交流イベントを開催するなども、一つのアイデアだと思います。